『田園の詩』NO.32 「京都ナンバー」 (1995.9.15)



 田舎は、夏休みになると都会からの来客で賑やかになります。大分県も、少しずつ
高速道路がつながってきたので車で帰省する人が増えてきたようです。特にお盆の頃は、
幹線道路は大分ナンバーより他県の方が多いくらいでした。

 ところで、先日、仲間と食事会をした時のことです。小学三年の息子が、Kさんの車の
ナンバーを見ながら、「お父さん、この≪れんうま≫(練馬)ってどこ?」と私に尋ねま
した。「それは≪ねりま≫と読んで、東京だよ」と答えたら、ちょっとびっくりしていま
した。

 そういえば、いつも集まる仲間の車のナンバーは、それぞれ異なっています。練馬、
北九州、福岡、宮崎、等々です。そして私のが京都です。Uターンしたり、移り住んでき
た人達が多い訳ですが、以前どこに住んでいたかが、これでいっぺんに分かります。


 何故、ナンバーを変えないのか? 私に関していえば「新しい車に買い替える時まで、
このままでいいや」と思いつつ、買い替えができず、もう八年も、大分県の中で京都の
車に乗り続けています。

 こうなると、面白いもので、今は京都ナンバーに愛着がわいてきました。車が古くなっ
たので、なんとか買い替えたいが、京都ナンバーは捨て難い…。今の私のちょっとした
悩みです。

 仲間の人達にも、多分に同じような傾向が見受けられます。皆どこかに都会に住んだ
形跡を残していたいようです。田舎にUターンしたり、自ら移り住んだ私の仲間達は、
都会の暮らしに挫折したからそうしたのではありません。ですから、都会で暮らしたこと
の意義を心の中にしっかりと持ち続けています。


      
     田舎に移り住んできた人が、自分の田舎暮らしの体験を本にまとめて、
     都会の友人に情報を伝えています。『安心院』は隣町。『沖縄』は最近こちらに
     移り住んだ人が、前に何年か暮らしていた沖縄体験をまとめた本です。
     今度は『大分・山香』を作ることでしょう。      (08.8.1写)



 『君子は交わり絶ゆとも、悪声を出さず』という諺があります。都会を去って田舎に
住んだからといって、都会の悪口ばかりいうような人は、田舎でもうまく暮らしていけ
ないと思います。

 「都会も楽し、田舎もまた楽し。」 こんな生き方をしたいものです。(住職・筆工)

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